ケーススタディ59「道路横断の高齢者に衝突」
☆事故の発生状況☆
大型トラックを運転するAは、数日前に起こった娘の原付転倒事故で気が病んでおり、その日も乗務前から娘の怪我が頭から離れない状態であった。
鋼材を搬送中、短いトンネルを出たところで、前方のバス停にバスが停車しているのを発見したが、考えごとで憂鬱な状態の中、バスの周囲に対する警戒心も無くただ漫然と走行を続けた。
バスからは数人の乗客が降車したが、先頭にいた72歳のBだけは、歩道に上がらずそのまま車道を歩き、バスの数メートル前方から車道を横断し始めた。
バスの運転手は危険と判断しクラクションを鳴らしたが、Bは耳が遠く、対向歩道上を歩いていた主婦も大きな声と身振りでBを制止しようとしたがBは反応せず、主婦は続けてトラックにも危険を訴えた。
Aはバスのクラクションも、主婦の危険の訴えにも何ら気付くこと無く進行を続け、バスの陰から出てきたBを直前で発見、初めて我に返ったように慌ててブレーキを掛けたが間に合わず、Bを前部バンパーで撥ね重傷を負わせてしまった。
☆事故の原因☆
① 体調管理やドライバーとしての自覚の欠如
② 状況に応じた適正な速度判断のミス
☆防止策☆
運転する際は、体調を整えていないと注意力が散漫になったり、判断力が衰えたりして、思わぬ事故を惹き起こすおそれがあり、ドライバーにとって体調管理は極めて重要です。出発前にはまず心身を安定させ、可能な限り体調をベストの状態に保ち運転するように心掛けましょう。
ドライバーは、如何に「気を病む」ことがあったとしても、ひとたびハンドルを握り、車をスタートさせたら、一切の悩みごと、考えごとを払拭し、終始運転に集中する必要があります。プロドライバーとしての確かな自覚を持って、注意を怠らないように運転しましょう。
この事故の場合、Bの道路横断が事故の一因でもあります。Bの家は、道路を渡ったすぐ近くで、通い慣れた生活圏内であったことが、Bの無謀な横断に走らせたと推測されます。高齢者は、運動能力、判断能力の低下は勿論ですが、一面においてドライバーに注意、警戒を依存し保護を求める意識も強く、それが危険な行動となり事故に繋がるケースが多いので、高齢者の歩行者や自転車には特に注意しましょう。